以前の記事で「日本語は世界で最難関の言語」だとご紹介しました。
日本語学校や、地域で日本語を学ぶ環境についてもお伝えしましたが、では実際、どのくらい話すことができれば『日本語でコミュニケーションがとれる』と認識されるのでしょうか。
日本語能力検定試験(JLPT)とは
1つの指針として、「日本語能力検定試験(JLPT)」という試験があります。
日本語を母語としない人を対象に、日本語の理解力を測定する国際的な試験です。日本国内外で実施されており、進学・就職・在留資格など、さまざまな場面で活用されています。
| 💡 企業の実態 現状として、日本の企業の多くはJLPTのレベルを採用・昇進の基準として活用しています。 「N2以上」「N1必須」といった求人票は現在でも多く、企業側にとっては一定の客観性を持った、わかりやすい指標となっています。 |
難易度レベル一覧


各レベルの詳細

ただし、どのレベルも「話す・書く・考える力」は別物と考えるのが普通です。
BJTビジネス日本語能力テスト
では、「会話」のレベルを測るにはどうすればよいのでしょうか。
「職場・ビジネスの場面で、日本語を使って適切に判断・対応できるか」を測定する試験として、「BJTビジネス日本語能力テスト」が信頼性の高いテストとなっています。
JLPTが「理解力中心」なのに対し、BJTは実務で使える日本語運用力(特に会話対応力)に強くフォーカスしています。
| ✅ BJT試験の最大の特徴 ✔ 会話・音声中心 ✔ 実際の職場シーンを想定 ✔ 正解は「文法的に正しいか」より「ビジネス的に適切か」 ✔ スピーキング能力を間接的に評価 ※ 面接形式ではありませんが、「話せる人ほど高得点になる設計」です。実際に話せない人は高得点が取れません。(暗記型では通用しにくい) |

JLPTとの比較

BJTは実務で使える日本語力を測る最良の試験です。
スピーキング力が事実上スコアに反映され、JLPTの弱点を補完できます。
BJTでJ2以上のスコアがあれば、日本の企業で十分通用するレベルだともいえます。
「理解力」と「会話力」
「文章への理解」と「会話する力」は、近くて遠い、という事がお分かりいただけたかと思います。
では、JLPTだけで「日本語ができる人」を判断できるのでしょうか。
結論から言えば、JLPTだけで日本語能力を完全に測ることは難しいと言わざるを得ません。スピーキングやライティングが試験に含まれていない以上、取得しているレベルがそのまま実務での日本語力を保証するわけではないからです。
一方で、現実的には日本の多くの企業がJLPTのレベルを採用・昇進の基準として活用しているのも事実です。
「N2以上」「N1必須」といった求人票は現在でも多く、企業側にとっては一定の客観性を持った、わかりやすい指標になっています。
完璧な評価基準ではないものの、日本での就労や進学を目指す外国人にとって、JLPTは依然として避けて通れない重要なステップのひとつと言えるでしょう。
| 💬 こんなパターンも① 「読み書きは苦手だけど、会話はめちゃくちゃ上手!」 日本語学校や大学などを経由せず、仕事や日常生活を通して実践的に日本語を身につけた外国人の中には、読み書きは不得意でも、会話力が非常に高い方がいます。長年の現場経験で培われた「生きた日本語」は、試験では測れない大きな強みです。 |
| 🏠 こんなパターンも② 「日本に長く住んでいるのに、日本語がほとんど話せない」 英語を共通語とする職場や、外国人コミュニティに囲まれた環境で長年暮らしてきた方の中には、日本での生活が長くても、日本語をほとんど使ってこなかったというケースも存在します。 これは能力の問題というよりも、「話さなくても生活できてしまう環境」があったことが大きな要因です。 こうした方が帰化申請を検討する場面になると、「一定程度の日本語能力が必要」というハードルに直面します。 長年日本に住んでいるにもかかわらず日本語に苦労するという状況は、本人にとっても大きな戸惑いや不安につながるケースが少なくありません。 |
どちらが良い・悪いではなく、TPOで必要な日本語は変わる
試験勉強でJLPTのスコアを上げてきた人、現場の仕事で会話力を磨いてきた人、英語環境で働いてきたためにあまり日本語を使ってこなかった人——どれが正しくてどれが間違い、という単純な話ではありません。それぞれが置かれた環境の中で、その時々に必要な日本語を身につけてきた、ということです。
雇用する企業側も同様です。
「N2以上」といった条件を設けること自体が悪いわけではなく、業務内容によっては合理的かつ必要な基準です。
ただし、試験のスコアだけで判断するのではなく、その人が「どのような場面で」「どのような日本語を使えるのか」を見ようとする視点が、今後ますます重要になっていくでしょう。

N1はあるのに話せない? 実際のエピソード
ここからは、「N1はあるのに話せない人」にまつわる、おもしろくて少し切ないエピソードをご紹介します。
Episode 1 「社内チャットの神様、電話の前で沈黙」
ある外資系企業での話です。

ところがある日、日本人の取引先から電話がかかってきます。

👉 受話器を持ったまま上司の方を見る
👉 上司がそっと電話を代わる

Episode 2 「面接で”完璧な日本語”→雑談で崩壊」
採用面接での実話です。
| 応募者のプロフィール ・N1 取得 ・日本語での志望動機:非の打ちどころなし ・文法・語彙:模範解答レベル |
面接官が安心して、最後に雑談——

「正しい日本語」しか練習しておらず、「使う日本語」を知らなかった典型例です。
まとめ
「N1はあるのに話せない人」には、ほぼ共通した特徴があります。

試験勉強は優秀ですが、実務経験が不足している傾向があります。

積極的に口に出して会話をすることが、上達への道なのは、日本語に限らずどの言語も同じなのかもしれないですね!

