世界には、より良い暮らしや働き方を求めて、母国を離れ、海外に生活の拠点を移す人が年々増えています。そんな「移住希望者」にとって、どの国が魅力的かは、時代や世界情勢によって大きく変わります。
近年では、アメリカをはじめとする国々で移民政策が厳格化されつつあり、「移住先の再選択」が始まっています。
では、日本はどうでしょう? 給与水準や治安、公共サービスの高さといった魅力は確かにありますが、「それだけ」で人を惹きつけられる時代は、終わりに近づいています。
世界の移住トレンドが変わりつつある
アメリカは長年「移民の国」として、多くの人々にチャンスを与えてきました。しかし、近年の政治的変化により、移民政策は引き締め傾向に。
その結果、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スペインなどが新たな移住希望者にとっての人気国として台頭しています。
日本は「悪くない立ち位置」だけど…
日本の在留外国人数は年々増加しており、2024年度末には過去最高を記録。アジア圏からの技能実習生や留学生を中心に、日本を選ぶ理由として以下が挙げられます。
✅ 経済的安定と高い給与水準(母国比)
✅ 技術やスキルの習得チャンス
✅ 治安の良さ、公共サービスの利便性
✅ アニメや日本文化への憧れ
給料だけで人は来ない — 「暮らしやすさ」の重要性
2025年4月3日の日本経済新聞のインタビューで、国立社会保障・人口問題研究所の是川 夕(これかわ ゆう)氏 は、
「日本は世界の中で見ればそこまで悪くない位置。ただし、給料以外の魅力を持たなければ人は定着しない」と指摘しています。
これは非常に示唆的な視点です。日本に来る動機が「仕事」だったとしても、住み続ける理由は「暮らしやすさ」にあるからです。
参考
海外での経験から見えた“受け入れの工夫”
筆者自身も、イタリアの移民弁護士事務所でインターンをしていた経験がありますが、そこでは印象的な取り組みがありました。
イタリアでは、「統合協定(Accordo di Integrazione)」という、ビザ取得後に言語プログラムや文化理解のための一定時間の受講が求められており、地域社会に溶け込むための時間が制度として確保されているのです。
一方、日本では特定の在留資格で一定の日本語能力が求められることもありますが、それが不要な在留資格も多く存在します。
日本語が唯一の言語コミュニケーション手段である日本において、言葉が分からないことで孤立し、地域社会との接点を持てないまま取り残されてしまうケースも少なくありません。
だからこそ、筆者は考えます。

どのような在留資格であっても、日本語や日本のマナー・文化を学べるプログラムを設け、疎外感を軽減する仕組みが必要です。
これは「来てもらう」だけでなく、「長く安心して暮らしてもらう」ために不可欠な要素だと思います。
“選ばれる国”になるために必要なこと
給与や待遇では他国に勝てない日本が選ばれるには、次のようなポイントが重要になります。
✅ 言葉の壁へのサポート(多言語対応、やさしい日本語、翻訳サポート)
✅ コミュニティとのつながり(孤立を防ぐ地域交流)
✅ 働きやすさと暮らしやすさの両立(住居支援、家族との共生制度)
✅ 文化と制度を学ぶ機会の制度化(イタリアのような定着支援型教育)
まとめ:給料より“安心できる国”へ
これからの時代、人は「金額」だけで国を選ばなくなります。
文化的な違いを尊重しつつ、言葉の壁を超えられる環境があること。
それが、「住みたい国」として選ばれるための大前提です。
日本が本当に 人を惹きつける国 になるには、「給料」以上に 人にやさしい仕組み を磨くことが求められています。